森見登美彦の「夜行」を読了したのでネタバレしない程度にオススメするお話
最近、通勤時の電車内で時間をもてあますことが多くなったので、久しぶりに通勤時の読書を再開しようと思い書店に向かいました。
すると、書店の入り口すぐの特設コーナーに可愛らしい女性のイラストが描かれたハードカバー本があるではありませんか。
手にとって見ると森見登美彦の「夜行」という作品でした。森見作品ならハズレはあるまいと思った私は目次すら立ち読みせずに、これまた久しぶりに作者+表紙買いをしました。
そして、いざ読んでみると意外や意外...これまでの森見作品とは少し異なる作風。そして表紙の可愛らしい女性も本編を読んでからだと、軽い表紙詐欺のように感じられました。
森見登美彦の作品といったら?
皆さまは森見登美彦の作品といったら何を思い浮かぶでしょうか。
私の場合、自分が大学生当時話題になっていた「夜は短し歩けよ乙女」から森見登美彦作品に入っていきました。
そして次にアニメ化もされた「四畳半神話体系」を読んだので、森見登美彦作品といえば、京都を中心としたコメディタッチの青春ストーリーがメインというイメージでした。
- 作者: 角川書店
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/09/23
- メディア: 単行本
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森見登美彦作品はなんというか、美味しいダシの効いたあっさりらーめんという感じで「美味しい!あたたかい!胃もたれもしない!箸も止まらない!」という感じで、読んでいる最中は次へ次へとページをめくりたくなり、読了した後は面白かったという満足感、もう一回読もうかなと思わせる魅力があります。
新釈走れメロスでは、タイトルの通り走れメロスや山月記など、誰もが知る文学小説を森見登美彦先生が京都を舞台にバカバカしいけれど面白おかしく改編しているので、文学は苦手という方にもオススメです。笑えます。
そして今回購入した「夜行」
この作品もこれまでと同じように、お笑いあり、青春あり、涙あり、かと思って読んでみたら、なかなか「お笑い」の「お」の字も出てきません。というか、読み進めるほどに話が薄暗く、重くなっていきます。
私が、この本がホラーだと気が付いた時はもう第1章の中盤を過ぎたころ。話は重く、先が読めず暗い。まさに「夜行」の中をさまよっているような感じです。
とにかく、登場人物に対する疑惑や疑問、気になる所が多く、次へ次へと読んでしまいます。夢中になって読んでいる時にふと催し、トイレに立ったところで真夜中を過ぎていることに気が付きました。うぅ、トイレに向かうまでの暗闇が薄気味悪い...そう思わせる程の力がある本でした、「夜行」は。
ネタバレ感想は他の方々が私なんかの駄文とは比べ物にならないくらい、丁寧にきれいに書き綴っていてくださいますので、そちらをご覧ください。
個人的に、怖かったのは第一夜の「尾道」と第二夜の「奥飛騨」ですかね。
それ以降は、徐々に怖さというより登場人物たちの哀愁やもう戻ることはできない日々への追憶のような物を感じました。全篇を読み終わった後、「え、これでお終い?」という気持ちにはなると思いますが後味の悪さを感じさせない良い意味での物足りなさであります。
あれはなんだったんだろう、この後はどうなったんだろう、と考察するのが楽しい作品だと思います。(社会人になってから、こういう読んだ本を考察しあえる友達がいないのが辛い...)
結局、みんな「夜行」のなかにいるのかな...?